そして今日のテーマは「TPP(環太平洋経済連携協定)」です。
先頃、日本のTPP交渉参加が正式に決まり、夏ごろにも交渉が始まる予定です。
その理由として、「TPPが始まって、自由貿易になり関税が無くなると、日本の農業は破滅してしまう」というものがあります。
また、医療保険や年金などの金融部門でも、TPPが始まると現状のシステムを維持できなくなるという心配もあります。
これらの心配が現実のものになるかどうかは、専門家にまかせましょう。
現在の日本経済のしくみはあまりに複雑ですので、何かの一面だけを取り出して考えるというのは難しいと言うより、無意味です。
「自由貿易」を行うとどのような利点があるのか、またその前提となる条件などを理解しておきましょう。
そうすることで、『どうして賛成する人と反対する人に分かれるのか』が分かるはずです。
どちらが正しいという次元の話でなく、自分なりに判断をする基準を得ることが出来るでしょう。
こんな状況はあり得ませんが、シンプルな設定にしておかないと、分かりやすい結果を得られないのです。
・リンゴ1つつくるのに必要な人数…10人
・タオル1枚つくるのに必要な人数…20人
・リンゴ1つつくるのに必要な人数…15人
・タオル1枚つくるのに必要な人数…10人
最初に、貿易を行わないパターンを考えます。
A国もB国も、リンゴとタオルの両方が必要ですので、人口をうまく割り振って両方を生産します。
割り振る方法はいくつかありますが、ここではリンゴとタオルに人口を半分ずつ割り振りました。

表を見ると、次のことが分かります。
リンゴ…6個
タオル…3枚
リンゴ…4個
タオル…6枚
リンゴ…10個
タオル…9枚
最初に、自由貿易を行うパターンを考えます。
それぞれの国が得意なものを全力でつくり、それを交換(貿易)するのです。
A国はリンゴづくりのほうが得意なので、全員でリンゴをつくります。
B国はタオルづくりのほうが得意なので、全員でタオルをつくります。

おぉ、両方とも増えましたね。
つまり、世界全体で見ると、豊かになったと言えます。
ここでは、「リンゴ1個=タオル1枚」を交換レートにして、6個(6枚)交換します。
するとこのようになります。

リンゴ…6個
タオル…6枚
リンゴ…6個
タオル…6枚
リンゴ…12個
タオル…12枚
世界全体で見ても、リンゴが2個、タオルが3枚増えています。
つまり、このような状態で「貿易」を行うと、参加しているすべての人が得をすることになります。
関税無しというのが重要な条件で、これがクリアできないと思ったほどの利益は得られないのです。
ですが、お互いに関税をなくすことが出来れば、両国にとって利益のあるものになります。
それは「国全体で見ると得をするが、損をしてしまう人もいる」からです。
つまり、先ほどのA国で言えば、最初にタオルをつくっていた人は、自由貿易になったらその仕事がなくなり、リンゴづくりをしなければならないのです。
仕事が無くなる、もしくは仕事が変わるのは「困る」ので、そのような人々は当然TPP(自由貿易)に反対しますよね?
全体の利益も大切ですが、個々人のことも大切にしなければなりません。日本は個人を尊重する国ですので。
ある意味で矛盾することを両立させなければならないのですから、政治家の仕事は大変なのです(^^;)
ここらへんについては、「経済ってなんだろう【TPP編その2】」で触れたいと思います。
と、こんな感じで書いてみましたが、どうでしたでしょうか?
実際の世界は計り知れないほどに複雑ですが、何となくでもイメージをつかんでいただけたらうれしいです。
テレビでコメンテーターが言っていることを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えられるように、"判断基準"となる知識を身につけましょう。
それではまた。
実際の世界は計り知れないほどに複雑ですが、何となくでもイメージをつかんでいただけたらうれしいです。
テレビでコメンテーターが言っていることを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えられるように、"判断基準"となる知識を身につけましょう。