2013年04月30日

経済ってなんだろう【TPP編その1】

今日は久しぶりにこのシリーズです。
そして今日のテーマは「TPP(環太平洋経済連携協定)」です。
先頃、日本のTPP交渉参加が正式に決まり、夏ごろにも交渉が始まる予定です。

交渉参加にあたって、農業関係者などがTPP反対を主張しています。
その理由として、「TPPが始まって、自由貿易になり関税が無くなると、日本の農業は破滅してしまう」というものがあります。
また、医療保険や年金などの金融部門でも、TPPが始まると現状のシステムを維持できなくなるという心配もあります。
これらの心配が現実のものになるかどうかは、専門家にまかせましょう。
現在の日本経済のしくみはあまりに複雑ですので、何かの一面だけを取り出して考えるというのは難しいと言うより、無意味です。

今日は、そもそも「自由貿易」とはどんなものであるのかに触れたいと思います。
「自由貿易」を行うとどのような利点があるのか、またその前提となる条件などを理解しておきましょう。
そうすることで、『どうして賛成する人と反対する人に分かれるのか』が分かるはずです。
どちらが正しいという次元の話でなく、自分なりに判断をする基準を得ることが出来るでしょう。

まず最初の設定として、『国が2つ、財(もの)が2つという世界』があるとします。
こんな状況はあり得ませんが、シンプルな設定にしておかないと、分かりやすい結果を得られないのです。

◆A国(人口120人)
・リンゴ1つつくるのに必要な人数…10人
・タオル1枚つくるのに必要な人数…20人

◇B国(人口120人)
・リンゴ1つつくるのに必要な人数…15人
・タオル1枚つくるのに必要な人数…10人

とまあ設定はこんな感じです。ちょっと極端ですけど、それは見逃してください(笑)

@貿易を行わない場合
最初に、貿易を行わないパターンを考えます。
A国もB国も、リンゴとタオルの両方が必要ですので、人口をうまく割り振って両方を生産します。
割り振る方法はいくつかありますが、ここではリンゴとタオルに人口を半分ずつ割り振りました。

TPP(その1)

表を見ると、次のことが分かります。

◆A国の所有量
リンゴ…6個
タオル…3枚

◇B国の所有量
リンゴ…4個
タオル…6枚

◎世界での合計
リンゴ…10個
タオル…9枚

最後の数字、つまり、リンゴ10個とタオル9枚がこの世界全体の生産高になります。

A自由貿易を行うパターン
最初に、自由貿易を行うパターンを考えます。
それぞれの国が得意なものを全力でつくり、それを交換(貿易)するのです。
A国はリンゴづくりのほうが得意なので、全員でリンゴをつくります。
B国はタオルづくりのほうが得意なので、全員でタオルをつくります。

TPP(その2)

まずここで世界全体の生産高を見ますと、リンゴ12個とタオル12枚になります。
おぉ、両方とも増えましたね。
つまり、世界全体で見ると、豊かになったと言えます。

ただこれでは、A国もB国も困ってしまいますので、「貿易」を行います。
ここでは、「リンゴ1個=タオル1枚」を交換レートにして、6個(6枚)交換します。
するとこのようになります。

TPP(その3)

表を見ると、次のことが分かります。

◆A国の所有量
リンゴ…6個
タオル…6枚

◇B国の所有量
リンゴ…6個
タオル…6枚

◎世界での合計
リンゴ…12個
タオル…12枚

貿易を行わない状態と比べると、A国はタオルが3枚増えて、B国はリンゴが2つ増えました。
世界全体で見ても、リンゴが2個、タオルが3枚増えています。
つまり、このような状態で「貿易」を行うと、参加しているすべての人が得をすることになります。

そして、今見たような、"特に関税などをかけずに行う"貿易を「自由貿易」といいます。
関税無しというのが重要な条件で、これがクリアできないと思ったほどの利益は得られないのです。
ですが、お互いに関税をなくすことが出来れば、両国にとって利益のあるものになります。

それなのにTPP(自由貿易)に反対する人が多いのはどうしてでしょうか?
それは「国全体で見ると得をするが、損をしてしまう人もいる」からです。
つまり、先ほどのA国で言えば、最初にタオルをつくっていた人は、自由貿易になったらその仕事がなくなり、リンゴづくりをしなければならないのです。
仕事が無くなる、もしくは仕事が変わるのは「困る」ので、そのような人々は当然TPP(自由貿易)に反対しますよね?
全体の利益も大切ですが、個々人のことも大切にしなければなりません。日本は個人を尊重する国ですので。
ある意味で矛盾することを両立させなければならないのですから、政治家の仕事は大変なのです(^^;)
ここらへんについては、「経済ってなんだろう【TPP編その2】」で触れたいと思います。


と、こんな感じで書いてみましたが、どうでしたでしょうか?
実際の世界は計り知れないほどに複雑ですが、何となくでもイメージをつかんでいただけたらうれしいです。
テレビでコメンテーターが言っていることを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えられるように、"判断基準"となる知識を身につけましょう。

それではまた。
posted by ナンバー・ゼロ at 13:00| 神奈川 ☀| Comment(0) | 時事問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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